この記事について
ご覧いただきありがとうございます。こちらはAudible(オーディブル)でのオーディオブック版《今、出来る、精一杯。》のレビュー記事となります。書籍版のレビューではありませんが、書籍版に興味を持って検索からこちらをご覧になられた方もぜひ参考にしていただけたら嬉しいです。どうぞぜひ素敵なオーディオブックライフ&ブックライフを。
作品情報
今、出来る、精一杯。
著者:根本宗子
ナレーター:根本宗子
再生時間:4時間49分
配信日:2022/04/21
制作: Audible Studios
カテゴリー: 文学・フィクション
Audible聴き放題対象作品
あらすじ・解説
【著者本人朗読】東京都三鷹市のスーパーマーケット「ママズキッチン」で働く人々は皆どこかヘン。しかしもっとおかしいのは毎日この店を訪れ「お弁当をタダでくれ」を叫ぶ車椅子に座る女だった……「演劇界の異才」が届ける初小説!
作品紹介
根本宗子さん初の長編小説。何の知識もなくカバーが素敵で聴くことをきめましたが、この作品は演劇作として書き下ろされ公演された作品を小説化とのこと。作家自身のらしさが詰まっている小説だと思います。多分、おそらく万人に刺さるわけではないんじゃないかな。ただ、刺さった人にはどこまでも強く心に残るような作品だと思います。劇の中に、小説の中に“リアルさ”を溶けこませるのが上手い作家さんです、大変素晴らしい作家です。
オーディオブックとしては…複雑な想い。オーディオブックマニアな自分は今作、厳しい評価をつけさせていただき、そして素直にそのまま書かせていただきます。
今作は著者本人による朗読。本人朗読というと僕はこれまで紗倉まなさん《働くおっぱい》と草薙龍瞬さん《反応しない練習》を聴いてきましたがどちらもエッセイなので小説の本人朗読を初めて。紗倉さんと草薙さんの作品で共通しているのは、どちらも朗読が上手いという事。更に言うと上手い下手だけでなく、ずっと聴いていたくなる声だということ。
そして今作の朗読は…お世辞にも上手いとは言えないです。というより100作品以上聴いてきてワースト5に入る酷さ。(サンプルを聴いて「これは聴くに堪えないな」と思った作品はカウントしておらず、聴了した作品だけなのでそこはご理解の程を)
今回はカバーの素敵さからサンプルも聴かず、著者への知識ゼロで先入観ゼロで聴いてしまったのでその朗読を苦痛に感じてしまいましたが、元々のファンの方ならばあの語り口こそが心地良いのかもしれないし、感じ取り方は人それぞれということで。
お勉強系のオーディオブックは再生スピードを1.4〜2倍にしていますが、小説のオーディオブックの場合は基本的にいつもノーマル再生で聴いています。しかし今作は1.4倍でやっと“聴ける”ものになります。本来、物語の世界観を感じるためにノーマル再生をしますが、そもそも朗読が物語の世界観を伝えきれていないので加速一択ですかね。そうでないとさすがに1時間も堪えられず離脱してしまう…。(ちなみに、声のプロであるAudibleナレーターの皆さんは発声がもうプロなので加速しても言葉が潰れたり変な強弱になったりしないのです、ここすごく大事)
今回の本人朗読は、ファンが声を聞けて喜べるためのものだったのかな。純粋に作品の世界感を伝えるのに本人朗読がベストだと判断したのでしょうか。オーディオブックを小説のオマケとしか考えていなかったとしたらとても残念。
小説というコンテンツがあって映画というコンテンツがあってラジオというコンテンツがあってオーディオブックというコンテンツがある。そうオーディオブックにも映画などと変わらず、そのコンテンツが好きな人たちが沢山いる。僕はオーディオブックが大好きなので、小説のオマケという扱いにしてほしくないと思ってしまいます。
小説を俳優たちが演じ映画化するように、ナレーターによって世界感を伝えられるような朗読でオーディオブックとして完成させてほしかったですね。もしくは、
《ペンギン・ハイウェイ》
著者:森見登美彦 ナレーター:安國愛菜《宝島》
著者:真藤順丈 ナレーター:松本健太《麦本三歩の好きなもの》
著者:住野よる ナレーター:悠木碧《AX》
著者:伊坂幸太郎 ナレーター:織江珠生《転生したらスライムだった件》
著者:伏瀬 ナレーター:岡咲美保
のような朗読レベルの高い作品を聴いて勉強して、自分の朗読を練りに練ってから完成してほしかったですね。そうしたらオーディオブックとしてこの作品がもっともっと輝いたと思います。
そんなふうに正直に書かせていただきましたが。結局のところ受け取り手次第なわけで、この作品を聴いてレビューとは全然違う感想を持つ人もいるでしょう。むしろプロフェッショナルではない本人朗読だからこその“リアルさ”が良かったという人もいるかも。実際セリフ部分とかはとても良いナチュラルな表現が出来ていた場面も確かにありました。ていうか、後半に行くにつれて経験値が増え朗読レベルが確実に上がってきたし(笑)作中で朗読レベルが上がっていくという謎な迷作(笑)
ぜひぜひこのオーディオブック作品を、貴方の感性で受け止めてほしいです。
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